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漢方薬情報(た行・な行)

『大建中湯』(だいけんちゅうとう)

パーキンソン病では便秘がしばしば見られ、緩下剤を投与しても効果の見られない例も多く、時にイレウスを起こす。慢性的便秘があり、しかも腸管の拡張による腹部膨満を認めたパーキンソン病患者に大建中湯エキス剤を投与した。

症例1: 81歳、男性。2週間後腹部膨満が著明に軽快した。便秘については明らかな効果は認められなかった。

症例2: 73歳、女性。2週間以内に腹部膨満が軽快するとともに、自然排便が見られるようになった。


若い女性で、無月経、摂食障害がある場合、大建中湯は非常に有用である。
大建中湯エキス剤を投与すると腸の働きが良好になって腹部膨満、便秘を解消し、食欲が起こり、その結果新陳代謝が改善されて、無月経の改善、摂食障害の軽快、治療が導かれる。

血液中の甲状腺ホルモンは2種類あり、甲状腺からサイロキシン(T4)が分泌され、肝臓などで代謝されトリヨードサイロニン(T3)になる。
無月経で拒食症では全例T4は正常でT3だけが低値である。大建中湯を投与すると症状が良くなるとともに低値だったT3が改善してゆく。


パーキンソン病では腹部膨満が高頻度に見られ、イレウスに至ることもある。
7例の腹部膨満を訴えたパーキンソン病患者に、大建中湯エキス剤を2週間投与したところ著効3例、有効1例であった。


31歳女性。過敏性腸症候群(以下IBS:irritablefowel syndrome)の診断で、近医で3年間各種投薬を受け効果なく、報告者の病院を受診した。主訴は腹痛である。各種画像検査で異常を認めず、腹痛型IBSと診断した。前医で投与されていなかった大建中湯エキス剤、および軽いうつ状態が見られたため、抗鬱薬であるパロキセチンを併用して投与した。その結果1ヶ月後には腹痛は消失、鬱状態も改善し、副作用も一切見られなかった。


モルヒネ利用患者の65%に重篤な便秘が見られるという。マウスを使った実験では、モルヒネを投与すると小腸、大腸ともに輸送能は大幅に低下したが大建中湯エキス剤を追加投与すると輸送能低下が著明に回復した。


慢性便秘症の小児に大建中湯エキス剤を投与すると1週間目ぐらいから便秘が改善されてくるケースが多い。
また大建中湯エキス剤を3ヶ月から1年ぐらい続けると、投与を中止した後でも良好な便通状態が維持できる例が多くこれは従来の緩下剤ではなかったことである。


麻酔下のウサギに大建中湯エキス剤を投与したところ腸管運動を増強させたが、子宮筋には影響を及ぼさなかった。これは女性の癒着性イレウスの治療に大建中湯を安全に使用できることを示す。


栄養状態の極度に悪い在宅医療中の女性69歳。胃チューブにより流動食400ミリリットルを1日3回予定したが、腹満が強く約半分しか注入できない。
そこで大建中湯エキス剤を投与したところ注入量が徐々に増加しやがて全量注入が可能になった。


脳卒中後の合併症の一つに麻痺性イレウスがある。抗イレウス剤が無効できわめて難治性のものも珍しくない。症例は74歳女性。左片麻痺で発症した脳梗塞の患者。
入院5日目より麻痺性イレウスになり、ジノプロストなどの抗イレウス剤の投与を行ったが全く無効であるため、抗イレウス剤を中止。
大建中湯エキス剤を倍量で投与したところ、3日目に排ガスがあり、8日目にイレウス治癒と判定された。


脳卒中後の合併症の一つに麻痺性イレウスがある。抗イレウス剤が無効できわめて難治性のものも珍しくない。

症例は72歳、男性。左片麻痺で発症した右視床出血の患者。入院時より麻痺性イレウスあり。パンテチンなどの抗イレウス剤を投与したが次第にイレウスが悪化、抗イレウス剤を中止して大建中湯エキス剤を通常の2倍量で投与したところ、2日目に排ガスが見られ、5日目にはイレウス治癒と判定した。


58歳女性。主訴:腹部膨満感と排便困難。20代より常習性便秘症であった。
この2,3年はセンナを使用している。大腸内視鏡で大腸メラノーシスを認めたのでセンナの服用を中止し、大建中湯エキス剤を投与したところ、60日目ごろから腹部膨満感も消失し普通便の排出が可能になった 。


報告者の大学病院小児外科に入院中で慢性便秘を訴える10名の患児に大建中湯エキス剤を投与した結果、6例の便通の改善を見たが、そのうち2例は食欲増進も認められた。


消化器手術後の単純性癒着製イレウスに対し、11の医療施設の共同研究として大建中湯エキス剤を投与して観察したところ、52名の患者について有用率88.5%という良い結果が出た。
大建中湯を使用しなかった従来の平均有用率75%に対し約15%改善されたことになる。


69歳の膀胱癌の男性で、回腸を用いて自排尿型代用膀胱造設術を行った患者。術後排尿状態は落ち着いていたが、腹部膨満感、軟便、排便後の不快感を訴えた。種々の薬剤を投与したが改善しない。
大建中湯エキス剤投与を開始したところ、2週間後には腹部症状は改善された。4ヶ月後には体調全般が良好である。


精神分裂症の治療は長期的に抗精神病薬を使用するため、抗コリン作用による副作用として頑固な便秘からイレウスをきたすことがある。57歳女性で分裂症の症状は現在のところ安定しているが便秘がひどく、2度もイレウスで入院した。
3回目のイレウスでの入院時には本人が漢方薬投与を希望したので、大建中湯エキス剤投与を開始した。2週間後には、腹部膨満感が楽になり、以後イレウスをきたすことはなくなった。


子宮頸癌で子宮全摘術と放射線療法を受けた患者が腸閉塞を繰り返した。顔色が悪く四肢の冷感が強い。
大建中湯エキス剤と、裏寒虚証として人参湯エキス剤を合方投与したところ、4日目に腹部症状が改善し、四肢の冷感も消失した。


腹痛や腹部膨満を訴える術後癒着性イレウス患者52名に対し、大中建湯エキス剤を投与したところ42名(80%)に症状の改善又は、消失をみた。


拒食症の女性患者6名を対象に大建中湯エキス剤を投与したところ腹部膨満感や便秘の改善が見られ、四肢の冷感の改善がみられ食事量の増加も見られた。


小児の慢性便秘の治療の目的は排便習慣の確立にある。そのためきつい下剤の使用は好ましくなく、安全で腹痛や悪心がなく、自然の排便を促す薬剤が望ましい生後6ヶ月から7歳の慢性便秘の小児90名に大建中湯エキス剤を間持続投与したところ生理的に近い排便が見られ有用度80%と判定された。

『大承気湯』(だいしょうきとう)

35歳女性。主訴は常習性便秘。防風通聖散を1ヶ月続けたが改善はなかった。
報告者を受診し、便秘と強いイライラ感を訴えた。顔面紅潮が認められた大承気湯エキス剤の投与を開始したところ、まもなく毎日快便が得られるようになり、顔面の紅潮も消失した。開始後4ヶ月で12kgの体重減少が見られた。


34歳女性。主訴:発熱、咽喉部痛。38度台の発熱と咽喉部痛が2日前から続いている。
他医で抗生物質、解熱剤をもらっているが改善しない。
報告者を受診。肥満し、熱のため顔が赤い。話を聞くとこの1週間大便が出ていないという。
大承気湯エキス剤を投与、1日分(7.5g)を1度に服用するように指示した。帰宅後多量の排便があり、すぐに熱が平熱になり、咽喉部痛も軽快した。

『大承気湯、加味逍遥散』(だいしょうきとう、かみしょうようさん)

76歳女性。主訴は頑固な便秘とイライラ感、顔面の熱感と紅潮であるが肩こり、全身倦怠、不眠など不定愁訴が極めて多い。頻回に腹部手術既往歴(腸ねん転、イレウス、ヘルニア他)がある。他院で大黄甘草湯を投与されたが、便秘の改善はなかった。柴胡加竜骨牡蠣湯エキス剤が投与され肩こり、全身倦怠感は改善されたが、顔面の熱感は逆に悪化した。
大承気湯エキス剤、加味逍遥散エキス剤を併用投与したところ便通顔面潮紅熱感が軽快し、2ヶ月で体重が4kg減少した。

『竹じょ温胆湯』(ちくじょうんたんとう)

感冒が長引いて胸苦しく、就寝後咳、痰が出て安眠できないタイプの患者22例を対象として、竹じょ温胆湯エキス剤を投与し、著効15例、有効6例であった。

『釣藤散』(ちょうとうさん)

64歳女性。近歯科医で上顎の総義歯を新たに作成装着したところ、突如として右側頬部に電撃様疼痛が発現し、さらに右眼窩周囲および側頭部に放散する激痛となった。
直ちに報告者の歯科口腔外科を受診した。受診時激痛のため、開閉口運動が出来ず、会話および咀嚼、開眼が困難であった。
特発性顔面神経痛と診断し、カルバマゼピン内服投与し眼窩下神経ブロックを実施したが、神経ブロックの効果は持続せず、またカルバマゼピンの副作用である全身倦怠、起立障害が生じた。
そこで釣藤散エキス剤を投与したところ朝夕の電撃様疼痛発作が劇的に消失し開閉口運動や会話などが次々と可能になって、7日目には疼痛が消失して義歯の装着が可能となった。現在も釣藤散の内服は続けている。


139例の認知障害(脳血管性痴呆)患者に、12週間にわたり釣藤散エキス剤を持続投与したところ、自発会話、表情、計算力、夜間せん妄などについて改善が見られた。


20例の慢性頭痛の患者に釣藤散エキス剤を持続投与したところ、4週間後には60%(12例)が8週間後には70%(14例)が頭痛が軽快または消失した。


69歳女性。回転性めまい出現、МRIで動脈瘤を発見され手術を受けたが、その後もめまいが続き、各種薬剤を投与されたが効果は少なかった。釣藤散エキス剤の投与を開始、2週間後効果がみられ、9週間後には完全にめまいが消失した。


著者らは、多くの施設で脳血管性痴呆症の患者に対する釣藤散エキス剤の効果を調べる研究を、偽薬を用いた封筒法(60例)と二重盲検法(139例)で行った。その結果、脳血管性痴呆に対する釣藤散の有効性が確実に認められた。


小児モヤモヤ病の患者で難治性の頭痛を訴える6例に釣藤散エキス剤を投与し、2例で頭痛が消失し、残り4例も頭痛の軽快をみた。


64歳男性。高血圧症のため30年前から降圧剤(カルシウム拮抗薬)を投与されている。半年前から頭痛と耳鳴りが出現し、内科医に紹介されて報告者(精神科)を受診した。初診時不安状態、うつ状態が著明であった。
抗不安剤、抗うつ剤を投与したが1ヵ月後に精神症が幾分軽減したものの頭痛、耳鳴りは変化なかった。そこで釣藤散エキス剤を投与したところ1週間後に頭痛、耳鳴りは消失し、2週間後には精神症状も改善した。


著者らは、多くの施設で脳血管性痴呆症の患者に対する釣藤散エキス剤の効果を調べる研究を、偽薬を用いた封筒法(60例)と二重盲検法(139例)で行った。その結果、脳血管性痴呆に対する釣藤散の有効性が確実に認められた。


46歳男性。頭重感、項部痛を主訴に受診、180/110mmHgの高血圧であった。
食事、運動療法を指導し、釣藤散エキス剤を投与した。2週間後血圧は178/118mmHgと変わらなかったが、頭重感、項部痛は完全に消失していた。
降圧剤の投与を開始、釣藤散と併用したところ、頭重感、項部痛は消失したままで血圧は160/90mmHgと低下傾向にある。


筋緊張性頭痛はストレスが主因のいわば「文明病」といわれている。
筋弛緩薬、鎮痛薬、抗不安薬、抗鬱薬など多種類の併用が普通である。
今回報告者の脳神経外科で筋緊張性頭痛と診断された患者139例を対象に釣藤散エキス剤を14日分投与して検討を加えた。他の薬剤は一切用いなかった。
その結果、頭痛133例中99例、めまい65例中41例、肩こり130例中72例、睡眠障害111例中66例の改善が得られ、おおむね良好であった。年齢で比べると65歳以上の高齢者のほうが65歳未満より著効率が高かった男女別で比べると女性のほうがより高い効果が見られ、特に65歳以上に限ってみると男女の差はより顕著であった。


48例の耳鳴り患者に釣藤散エキス剤を4週間投与し、耳鳴り研究会作成の検査法にもとずき効果を判定した。その結果、著明改善が23例であった。
女性よりも男性で、若年者よりも高年齢者で、両側耳鳴りよりも片側耳鳴りでそれぞれ改善率が高かった。

『釣藤散,黄連解毒湯』(ちょうとうさん、おうれんげどくとう)

70歳男性。診断:重度の痴呆。妻はすでに他界し40歳の独身の一人息子が世話をしている。
10年以上前より物忘れが目立った。最近は直前の出来事も忘れている。1日に20回以上も転倒する。
長谷川式では0点である。息子には予後の厳しいことを告げ、釣藤散エキス剤と黄連解毒湯エキス剤を投与した。2週間後、転倒することが日に3~4回と激減し息子の声賭けにも反応するようになり、介護が大変楽になったと息子に感謝された。

『桃核承気湯』(とうかくじょうきとう)

70歳女性。主訴は腰のだるさ、下肢の冷え、頻尿。主訴に対して真武湯、八味地黄丸、温経湯、五積散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯など(いずれもエキス剤)を投与するが効果ははかばかしくなかった。そのうちに患者は便秘と顔のほてりに苦しんでいることを洩らすようになった。
そこで桃核承気湯エキス剤投与を開始したところ、便秘、顔のほてり、下肢の冷えが劇的に改善した。

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